〇〇 7月のカメラマン平のぶらぶら日記

7/31
気温36.8度。ピーカンの夏の昼下がり。日射しは大阪の街に張り付いて今にもパラ、パラと剥がれて落ちてきそうだ。冠布をかぶった顔には汗がタラタラ。アチー!思わず口からこの言葉が先ほどから何度と無く出てくる。横では洗い屋さんが水道でモップやらバケツを洗っている。あの水頭からかぶったら気持ちよさそうだなあ、と思った瞬間である。シュポッと水道の配管が抜け水が噴き出したのだ。水は土の入ってない花壇にどんどんと流れ込んでいる。僕はあーあーと思いながら隣で見ていた。洗い屋さんは辺りに元栓がないか探していたが見つからず、抜けた配管を手でつなげようとしたのだが、悪いことにその時蛇口が上を向いてい水は勢いよく3メーターほどある仮囲いを越えて道路の方に飛び出した。その間3秒ほど。洗い屋さんはさほど気にせずまた配管を外し、そこから出てくる水で作業を続けだした。僕はちょっと悪い予感がしたしたが、まあこの暑さだから少々水がかかったぐらいで怒鳴り込んでくる人はいないだろうと・・・・いた。
そのサラリーマン風の男は目を三角にして「だれじゃ〜今水かけたんは!」と怒鳴り込んできた。「どないするんじゃわれ!」「責任者よばんかい!」めちゃめちゃハードな怒り方である。洗い屋さんは状況を説明しながら「スンマセン、スンマセン」と謝っている。「謝って済んだら警察いらんのじゃ!」「どない責任とってくれんねん!」ますます激しく怒り出すサラリーマン風の男。少し異常である。見た目は真面目そうなのだが口にしてる言葉はもうヤクザ顔負けである。監督さんと洗い屋さんの親方が来てからも長くもめていたがなんとか折り合いがついたみたいで、そのサラリーマン風の男は帰っていった。
この暑さは人を異常にさせるのか。それとも本性を出させるのか。異常な事件が多発している昨今。原因の一つにこの地球温暖化の異常な暑さがあるのではないだろうか。
暑い夏。みなさんもどうぞ御安全に。

7/25
先日久しぶりに散髪屋に行った。最近は髪が伸びるとエストモさんにチョキチョキやってもらっていたのだが暑くなると汗で切った髪が、あっちこちにひっついて気持ち悪いのでしょうがなく行ったのである。僕は散髪屋があまり好きではない。理由は幾つかあるのだが、もの心ついてから数十年、散髪する前より散髪した後の方がカッコイイと思ったことがまず無い。散髪し終わってメガネをかけたらいつもガッカリする。これは散髪屋さんの腕の問題じゃないだろう。どこの散髪屋でもそうだった。散髪している時はメガネを外すわけで、僕には自分の頭がどうなっているのか全くわからず、だいたいカットが終わったときにメガネをかけてくれて「こんなもんでどうでしょう?」なんて聞くわけで、「もう少し長く」なんて注文は出来ないわけで「ああ・・こんなもんでいいですよ」と言うしかないのである。だから散髪してから2週間ぐらいはしっくりこないのだ。
それと散髪しながらの世間話。これが嫌で、話し好きの散髪屋なんかに行ったら最悪である。
散髪屋「暑いですね」
僕「はあ・・」
散髪屋「昨日なんて36度ですよ、36度。どうかなりそうですよ。私なんか平熱が35.5度だから外に出たら0.5度程気温の方が体温より高いんですよ!ビックリしますよホントお客さん」
僕「はあ・・」
散髪屋「今日はお休みですか?」
僕「はあ・・」
散髪屋「夏休みですか?」
僕「いえ・・」
散髪屋「お勤めですか?」
僕「いえ・・」
散髪屋「景気悪いですもんねえ」
僕「はあ・・」
散髪屋「夏休みはどこか行かれるんですか?」
僕「いえ・・」
散髪屋「景気悪すぎますよねえ」
僕「はあ・・」
散髪屋「子供さんがどこか連れて行けってやかましいでしょう?」
僕「いや・・」
散髪屋「子供も子供なりに肌身で景気の悪さ感じとってるんでしょうねえ」
僕「いや・・」
散髪屋「うちもね、ここに店出してまだ2ヶ月でね。こんな景気でしょ。普通に営業してたらだめだと思いましてね。年中無休にしてるんですよ。値段もグッと安くしてね。努力ですよ努力、お客さん」
僕「はあ・・」
散髪屋「まあ盆と正月ぐらいは休ましてもらわないとね。身が持ちませんから」
僕「はあ・・」
散髪屋「でも手当は黙ってたら貰えませんよ」
僕「えっ?」
散髪屋「役所なんて勝手なんですから」
僕「はあ・・」
散髪屋「最近は職安って言わないんですよねえ。ハローワークとかなんか言ってしゃれてるんでしょハローワーク」
僕「はあ・・」
散髪屋「ちゃんと申し出ないとね」
僕「はあ・・」
散髪屋「これからはコンピューター産業でしょ。ほらIT,ITって言ってるでしょ」
僕「はあ・・」
散髪屋「それとこれからは英語が出来ないと。いや中国語かなあ。ニイハオなんて」
僕「はあ・・」
散髪屋「でもやっぱり健康ですよ。健康。健康一番!」
僕「はあ・・」
散髪屋「健康だったら何かあるって」
僕「はあ・・」
散髪屋「選んじゃだめですよ、選んじゃ。好きな仕事がないからってぶらぶらしてる奴いるでしょ。何考えてんでしょうねえ。まったく」
僕「はあ・・」
散髪屋「そりゃ散髪屋なんかもいいんだけど最近競争相手が多くて。この業界」
僕「はあ・・」
散髪屋「あっ、そうだ。手に職着けたら」
僕「いや・・その・・」
散髪屋「やっぱ今からじゃちょっと遅いか」
僕「はあ・・」
散髪屋「でも散髪なんて誰でも出来るからなあ。こんなもん。少々失敗してもどうせまたすぐにはえて来るんだから。ハハ」
僕「・・・・・・」
散髪屋「お客さんも若いんだから。元気出して!まだまだこれからですよ!」
僕「いや・・その・・僕は・・そんなんじゃ・・・」
散髪屋「はい。いっちょあがり!こんなもんでどうでしょう?どう、ここんとこちょっとサービスしときましたよサービス!」
僕「・・・はあどーも・・・てゆうかー・・・もう少し長めに・・・いや・・・こんなもんでいいですよ」
散髪屋「まいどおおきに!」
僕は「またかあ」と思いながら頭をかきかき散髪屋を後にする。「頑張ってお客さん」となぜか励ましてくれる散髪屋のおやじにニコッと笑って見せて、「おまえも頑張れよ」と心の中で呟くのだった。

7/18
環状線、桃谷駅で降りてぶらぶら始める。梅雨は明けたものの空はパリッとしない。
夕立が来るのかなと思いながら込み入った街並みを撮り歩いていく。どこかから夏祭りのはやしを練習している小気味よいリズムが聞こえてくる。最近は建物そのものより街並み、いや路地かな、そんな所にレンズが向いているようだ。雲が厚くなり昼間なのにカメラのフラッシュランプが点灯する。100メートル先あたりでシャワーのような水しぶきが上がる。来たか!間一髪、寺田町駅のガード下に逃げ込む。すごい夕立が20分ぐらい続き僕はそこで2本のたばこをゆっくりと吸った。夕立が上がった後もパラパラと小雨は降っていたが気にせず天王寺に向けて歩き出す。この辺はいい被写体(風景、街並み)が多いなと思いながら天王寺駅に着く。近鉄百貨店前の歩道橋の上からパチリパチリ、通天閣もいい位置に見え、歩道橋を歩く人や下を通る車がファインダーからあふれ出す。このゴチャとした感じが大阪なのか、いや東京を撮ったことのない僕がこれが大阪だなんて言えないが、確かに言えることはここがアジアであると言うことだ。この季節日本がもっともアジアらしく思える。
歩道橋の下から「リンリンリリン、リンリンリリン」というフィンガー5の懐かしいメロディーが聞こえている。さっきからずっとだ。どこかの売り出しの音楽だろうと思っていたのだがよく見るとそれは選挙応援のもので、フィンガー5の誰かがこのたびの参院選に立候補しているのだ。そしてそこから100メートル先の歩道橋の下では国会でグラスの水をぶちまけ謹慎した議員がロンゲの髪を束ね日焼けした顔で右翼も真っ青な迫力で芸能レポーターの応援演説をしている。そんな人通りの多い所から一筋入ったところに政治家になろうとしている者が一番注目しなければならない世界があるのに・・・まずは当選してからと言うことか。そんなに政治は甘くないよ。
天王寺まで行ってぶらぶらしてから新世界、難波、心斎橋、そして大正の大阪ドームまで歩いた。7〜8キロぐらいだろうか。今日はけっこう歩いた。大正の駅から大阪駅に着いてみるとJR神戸線は凄い混雑。先ほどの夕立は滋賀県の方ですごかったらしく電車が遅れているのだ。西宮までの車内はギュウギュウ詰め。車掌は電車が込んでいるのをすまなさそうにアナウンスしていたがなぜか尼崎のことを「あながさき。次はあながさきです」と言って僕をクスクスとさせた。大阪の暑い夏が始まった。

7/10
先日、森山大道のエッセイ写真集「犬の記憶 終章」を購入しじっくりと見た。
やはり大道さんの写真に対する思いは並大抵ではなく読んでいて感心したり感動したりでさすがは森山大道と言う感じでした。写真の方も迫力満点で僕がやっているぶらぶら写真との違いは最後の一歩の踏み込み方の違いだと思ったわけです。あのロバート・キャパがある人から「どうしたら、あなたみたいな写真が撮れるのか?」と聞かれて「簡単なことだよ、いつも撮っている位置からもう一歩被写体に近づけばいいだけさ」と答えたそうですが僕的には被写体に近づき我が我がと言うような写真はあまり好きではないし、撮れないと思っているのですが今回の大道さんの写真集を見てこんなのもいいなと思い直したところもあり、次のぶらぶら写真からちょっと試してみたいと思います。
大道さんはエッセイの中でパリの街を撮った写真家ウジェーヌ・アッジェの写真は凄いと褒め称えています。僕もアッジェの写真は大好きで大道さんに同感なのです。ではどんなところがいいのか、凄いのか?このエッセイの中にも詳しく書いてはあるのですが今回は藤田省三氏の「写真と社会」小史(みすず書房)の中からの一節を紹介したいと思います。

アッジェの写真は静かである。其処には一切の饒舌がない。
如何にも意図的な場面構成の人工的取り合わせだとか、工学的粒子の対照の極端な利用だとか、細部の精密さの目立った繁殖だとか、そういう自意識に満ちた写真技術上の衒いが全く無いことによって静かである。
そのような外側から物に加えられた加工製品を彼の写真は見せようとはしない。
その代わりに、物の相貌がその「隠された次元」の奥から語り始める。
其処に写されている物だけが、他の全てから取り残されてその孤独において自らの本燃の姿をその物自身の音声なき「言葉」で語ってくる。
だから私たちは、他の何からも要求されることなく、自然にそれに見入ることになる。

どうですか?すこし難しい所もありますが、だいたいわかるでしょ。まだアッジェの写真を見たことのない人は是非・・・・・。

エス・トモより・・暇なので、おせっかいな一言
撮って欲しいと望んでいるわけでもないのに、かってに撮りに来るカメラマンと言うのは、うっとうしいもんやなあ。
森山さんが撮りにきたら、「うるさい。人をのぞき込むな。あっち行け。」と言うでしょう。もしプロ的素早さで撮られたら「お前誰や。」と言った不機嫌な顔になるでしょう。
アッジェさんが撮りに来たら、どうせ準備に時間がかかるだろうから、「かってにやったら。」と言って、みんなでいなくなってしまうでしょう。と思うわけです。
・・ああ、暑い。

7/3
暑い日が続きますが皆さんお元気ですか?
先週は水曜日から日曜日まで暗室に籠もりっぱなしでプリントをしていた。暗室と言ってもいつも仕事したりパソコンしたりしている部屋に暗幕をして使っているだけなの簡易な暗室なのだが、これがとにかく暑い!この季節エアコンのない部屋を閉め切り閉じこもるのがどれほど暑いか・・・現像液20度を確保するのが大変で氷を作るのがおっつかない。それと1回薬品を作ると途中で止められないので朝方の4時とか5時まで焼き続ける。昼と夜の逆転と暑さ、プリントされた写真との自問自答「いい線行ってる?」「まだまだやで」独り言を呟きながら、汗をふきふき。
先日、毎月ポストカードを送っている人から毎月ポストカード楽しみにしているとメールが届いた。そして今日も高校時代のラグビー部の先輩から激励のメールが来た。とても励みになります。がんばります。
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