COMMUNICATION
REM art BOOK NO7 
Novenber 2013


突然、そういうことを思ったのは、夕方、プールに泳ぎに行った帰りのことです。

プールから上がったら、更衣室に流れる終了の音楽が、やたらにアップテンポの蛍の光で、

「急かされてるみたいやねえ。」

「ほんまやわ。」

と、周りの会話を聞きながら、急いで着替えたこともあって汗をかいて、

出口まで一緒になった女性と、

「水着だとみんな若く見えるけど、色々身につけるとそれなりですね。」

「私はもう年だけど、あなたは若いでしょ。」

「いやいや、それほどでも。」

というような話をしながら、外に出たら日が暮れて冷え込んでいて、

帽子からはみ出した濡れた髪が首筋に垂れて、ぞくっと冷たい。

自転車に乗って、冷や冷やと風を受けて走りだしたそのときです。

「私は年をとるのを、止めよう。」

と思いついたのは。

人は年を取るものだ、そうして変わっていくものだ、などという言葉にはもう騙されない。

昔と同じ夕暮れを、昔と同じように冬の気配を感じながら、私は自転車で走っている。

私はこのままでいようと決めれば、そうできるのだと思ったのです。

私はこのまま、年をとらずにいようと思います。

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